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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2122号/03.06.02

情の力
日本人のこころ抄

五木 寛之 著  講談社(定価1500円)

書籍画像 デフレ不況にあえぐ日本は、この4年間、毎年3万人以上の自殺者を出している。
 著者はいう、「いま、私たち日本人のこころの状態は、未曾有の砂漠化がすすんでいる」と。また「かつては私をふくめて、ほとばしる清列な水と、篤い信仰心と、庶民大衆の自由独立の気風がみなぎる熱い列島だったはずだ」と。
 そして著者は、自分の足で全国をまわり、かつての日本人の暮らしと、情の原郷をたずね、九州の「隠れ念仏」も、東北の「隠し念仏」も、広島の「家船(えぶね)」や「サンカ」の存在も、大阪の寺内町や、京都の前衛性や、差別制度の王城としての江戸・東京も、加賀の宗教コミューンの歴史も、すべてが私たちのふみいることのない日本人の情の、輝くばかりの原風景であった、と感嘆する。
 その「情=こころ」をまとめ刊行したものが「日本人のこころ」シリーズ全6巻(講談社)で、この本は、その水先案内として書かれた。蓮如はいう「人は軽きがよき」と、著者はいう「本も軽き」が重要と……。 (T)

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