pagetop
部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2149号/03.12.15

島崎こま子の「夜明け前」
エロス愛・狂・革命

梅本 浩志 著  社会評論社(定価2700円)

書籍画像 「木曽路はすべて山の中である」。島崎藤村の長編小説『夜明け前』はこの書き出しで始まる。小説は「明治維新」で革命をめざしながらも挫折し、「狂人」扱いのうえ死去した父親の姿を、歴史のダイナミズムのなかで描ききった力作として藤村の名を決定的に高めた。野間宏は、これを読み全体小説をめざした。
 しかし藤村は、この小説を書くために、小説『新生』を発表し、姪の島崎こま子との間に子どもまでもうけたのに離れ、退路を断とうとした。藤村は大作を完成させ名を得たが、こま子は、もう一つの「夜明け前」の道を歩む。「京大ケルン事件」(野間宏著『暗い絵』に詳しく書かれている)など、京都―東京で救援運動を軸に共産主義運動に入っていくのである。貧困、生活苦、弾圧、拷問のなかで、1937年には行き倒れになる。こま子は敗戦後も松川、白鳥事件の救援にあたった。
 藤村、こま子の愛の軌跡をたんねんに資料を駆使して描いたのがこの本だ。スキャンダリズムでない視点からの叙述がすばらしい。  (A)

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)