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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2115号/03.04.14
 4月7日は鉄腕アトムの誕生日だ。手塚治虫の描くアトムは、私たちの子どもの頃ヒーローだった。アメリカもののアニメばかりのなかで、はじめての国産テレビアニメとしても注目を浴びた
▼手塚治虫は戦後民主主義を体現した作家だった。一人ひとりの個性や自立を促す民主主義を実現しようとした。しかし地獄への道は善意で敷き詰められている
▼彼は、黒人へのステレオタイプの、ある種の偏見をともなった描き方をした。戦後的なヒューマニズムをこえることができなかったのだ
▼鉄腕アトムの最終回が、戦後民主主義をこえることができなかった作家を象徴している。アトムは、地球=人類を救うため太陽に突入し、つぶれて(死んで)しまう
▼これは、反共のためのエンターテイメントを目的に制作されつづけているアメリカのハリウッド映画と同じだ。偉大なる共同体のために一命を捧げる、という構造はまったく一緒だ。これは、戦争の論理でもある
▼「イラクの人民を解放する」として始められたのが、今回のイラク攻撃だ。「この国を侵略する」と宣言して行動するものはどこにもいない。大義名分と国家意志のもとでの戦争に、民衆は偉大な共同体のため一命を捧げることを強要されるのだ
▼私から出発し、世界をどう対象化するのか、その世界をどう獲得するのか。そこからの出発が戦後民主主義が残した最良のものだと思うのだが、どうだろう。

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