藤田省三さんが5月28日に75歳で亡くなった。日本を代表するリベラリストの思想家で、『天皇制国家の支配原理』をあらわし、その後は転向研究でも知られている。藤田さんの論考のポイントは、あるときは厳父であり、あるときは慈母でもある天皇の存在であった
▼「農本主義」「郷土主義」を支える共同体原理と権力的国家機構をリンクする「天皇制的」構造の解明が藤田さんの生涯のテーマだった。みすず書房から全10巻の著作集が出ている。その月報には、「おれが死んだら上下2巻の著作集を出す約束がある」と書かれている
▼全体主義の体験が風化するなかで、昨今の有事法制を中心とする憲法原理を無視し新たなステージに一気に駆け上がったこの国の姿をどうみてきたのか、気にかかるところだ
▼この国の一木一草にいたるまで天皇制が宿っている、といったのは竹内好だった。かくのごとく、藤田さんが解明しようとした天皇制は、いまもこの国に確実に根付いているのである
▼たとえば朝鮮民主主義人民共和国(共和国)の現状を批判する人びとは、過去の自分たちが熱列な支持を与えてきた天皇制の歴史を忘れている。共和国にそうした批判をしながら、自分たちの日常では天皇制を支持し支える方向にあることは間違いない
▼部落解放運動も天皇制との関係はつまずきの石だった。であればこそ、反天皇制を掲げつづけることは重要なことだ。
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