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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2153号/04.01.19

ブラック
人種と視線をめぐる闘争

萩原 弘子 著  毎日新聞社(定価3200円)

書籍画像 アリス・ウォーカーの作品、映画『戦士の刻印』を本紙で紹介したことがある。「女性性器切除」のドキュメンタリー映画だ。わたしは、フェミニズムを標榜し、女性の人権侵害を問うドキュメントとして紹介した。
 本著『ブラック―人権と視線をめぐる闘争』ではこの映画について論じている。映画を「女性割礼について、ドキュメンタリー映像について、アフリカを対象とすることについて、長い論争の流れのなかに置いてみることが必要だという認識は共有されていない」と、映画はどしがたくアフリカ女性を、先進国女性が植民地化する「新植民地主義」であると断ずる。精査された論考に、映画の紹介記事もまた、植民地主義を内包していたことに気づく。
 黒人文化研究の試みであると著者がいう本著は、人種と文化の政治学を骨格にし、映画や絵画、芸術作品を解く。人種主義を視座に作品を追いながら、どれほど、先進国的感性をみずからが涵養しているかを問うことになる。03年にもっとも心に残った一冊だ。(汝)

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