クルドの肖像
もうひとつのイラク戦争
朝日新聞「クルドの肖像」取材班 著 彩流社(定価1800円)
本書は、クルド人の1家族の歴史をたどった1冊。激動のイラクが、そこに生きている人間の目線から紹介されている。
クルド人とは、おもにトルコ、イラン、イラク、シリアにまたがって住む「祖国なき民」といわれる人びと。「祖国なき民」の生をとらえた本書は、かつては「国体の護持」といい、いままた「愛国心」「伝統」などの言葉で「国家」の幻想をあがめようとしている日本人への大きな皮肉でもある。クルド人の苦悩は、クルド人による独立国が存在しないことよりも、むしろ自民族中心の排外主義的な独立国ばかりが世界に存在することにある。世界平和や人間の幸せへの鍵は、一部の権力者を中心とした「強い国家」を建設することではけっしてないのだ。
「アラブもトルクメンもクルドも、みんな一緒に生きていくしかないんだ」。1920年に生まれ、激動のイラクを生き抜いてきた本書の主人公「アハマド一家」の最長老も、ぬくもりのある短い言葉に、つぎのステップは「共生」であると示唆している。(K・S)
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