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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2173号/04.06.14

現代の戦争報道
戦争の真実は伝えられているか?

門奈 直樹 著  岩波新書/最新刊(定価740円)

書籍画像 「武士道」を美化したハリウッド映画『ラスト サムライ』。DVDで見たが、トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之らの騎馬武者勢と大砲・銃剣・機関銃の明治政府軍との戦闘場面が印象的だった。
 まさに「魅惑的」「情熱的」に演出された戦争。「カッコいい兵士」や軍事技術への崇拝心・好奇心に導かれ、「現実逃避」の快さから、映画の枠外に置かれた「殺人」という戦争の本質への恐怖が、別世界の話に思われた。
 これは映画の話だが、では、「戦争の惨禍」をふまえた憲法のある日本の国政に、「殺人」という戦争の本質を一笑に付す勢力がのさばっているのはなぜか。戦争体制構築の大義「テロとの戦い」の正当性への疑義の軽視はなぜか。サムライの軍勢を全滅させながら「武士道」への疑義を見事に封じた『ラスト サムライ』の演出のように、魅惑的・情熱的な戦争イメージが日本中に行き渡るしくみがあるに違いない。
 本書は湾岸戦争からイラク戦争にいたる戦争報道を分析した一冊。ぜひ一読を。 (K・S)

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