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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2179号/04.07.26

民衆宗教と国家神道
日本史リブレット

小澤 浩 著  山川出版(定価800円)

書籍画像 江戸末期の人びとは天皇という政治的・宗教的システムを必要としない程度には近代化しつつあった。すでに天皇は伊勢神宮のお札程度の御利益しかなかった。落ちぶれた天皇は、即位の費用もままならず退位もできなかった、という事実もその傍証の一つだろうか。
 幕藩体制のゆらぎを庶民は不安とともに敏感に感じとった。「民衆宗教」の出現はその心情を代弁したものでもあり、その誕生は、寺檀制度や迷信に縛られた庶民には、解放的意義をもつものであった。それら「宗教」の特徴は「人間の高い倫理性」の希求であり、それは、民衆の自己確立の過程でもあった。
 だが、谷川健一をして「神殺し」といわせた神仏分離にはじまる明治政府の神道国教化政策は、天皇の宗教的権威の復興を軸とした宗教政策を強行する。天皇制と相入れない「民衆宗教」を弾圧し、迷信からの克服過程にあった日本人の意思形成にとり返しのつかない楔を入れた。
 この過程を改めてみることは、現在の状況を読むことでもある。(安)

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