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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2199号/04.12.20

多文化主義と
ディアスポラ

戴 エイカ 著  明石書店(定価3400円)

書籍画像 戴エイカさんは台湾にルーツをもち、日本に在住していた。現在はアメリカに生活の拠点をおき、文化人類学を研究している。日本の大学に客員として招かれ出会った。単一民族観が主流をしめる日本と多民族国家を「ひとつの宣伝」としてきたアメリカ、そのふたつを生活空間にした経験と、研究者としての視点。本著『多文化主義とディアスポラ』は著者が「みずからを問いつづけた本」ともいえる。
 多文化という言葉は私たちにとって決して新しい言葉ではない。多様な人びとの尊厳と権利が守られる社会と、希望をこめて使うことがある。
 しかし、アメリカを例にあげ、「国家」が「多文化」や「多元化」を回収し、「国家」観の強化につなげてきたという彼女の指摘は鋭い。
 だからこそ、出身地と居住地の双方の政治に関与し、支配的言説で語られてきた、国家や国家からの排除の歴史性を解き明かす、ディアスポラ(散住する人びと)の可能性を彼女は説く。硬質でむずかしい一冊ではあるが、示唆が多い。(汝)

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