「金持ちと女性が憎い」という理由で30代の男性が1年たらずの間に21人も殺害したとされる事件が韓国で大きな話題になっている。昨年9月の出所後資産家を狙ったのは「みずからの不遇が金持ちのせいと恨んだため」という。その後、同居した女性に結婚を断られ「女性に憎悪を抱いた」と語ったとされる
▼事件の凶悪化に厳罰主義でのぞもうとするのが法相の諮問機関の「法制審議会」だ。有期刑の上限を30年とし、死刑・無期から減刑したさいの有期刑の上限も現行の15年から30年と倍にした。個別の罪の刑も重くし、時効期間も大幅に長くした
▼しかし、こうした厳罰化が犯罪の抑止力となるかというと、大きな疑問符がつくのが現実だ。刑務所出所者の50%が5年以内に再入所している実態。刑務所内でおよそ社会復帰に備えたプログラムなどが実現されていない現状など、更正施設の問題がまず存在する
▼刑罰はいわば対症療法。社会のなかで犯罪をなくす工夫が必要だ。それは防犯カメラを設置したり、相互監視体制を敷くことではない。犯罪の社会的要因を分析し、それを取り除くことだ。たとえば貧困や社会的排除など
▼韓国では、今回の凶悪犯とされる人物の逮捕が、死刑論議を巻き起こしているという。日本でも、残酷な死刑制度にたいして、市民レベルでの論議がもっと必要だ
▼厳罰化の流れは、憲法改悪への下準備でもあるのだ。
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