斎藤貴男著『不屈のために』(ちくま文庫)を最近読んだ。「日頃は処世術に憂き身をやつしているような人たちにこそ手に取ってもらおうよ」と担当編集者と話合って出しただけに、何がいまの世の中の問題なのかが、わかりやすく書きこまれている
▼もちろん若干の重なりはあるものの、格差社会・階層社会化、総監視社会のはらむ管理社会化、戦争国家化の問題などが手ぎわよくまとめられている。最後の強者(エリート)が指向する社会の肖像もおもしろい
▼そのなかに、こんな引用がでてくる。「経済的な危機や何かが起こると必ず損をする階層、階級がアメリカにはあるのです。それが黒人です。それは社会の中でスポンジのような役割を果たしています。(中略)そこにおいてある種の圧力が吸収されるのです。不公平な話かもしれませんが、社会の仕組み全体としてはアメリカの強さなのです」
▼なにをかくそう、これは「新しい歴史教科書をつくる会」名誉会長の西尾幹二・電気通信大学名誉教授の本のなかの一節なのである。つまり平等はよくない、ということ、差別は必要ということを説いているのだ
▼上みてくらすな下みてくらせ、というわけだ。そこで民衆の圧政や抑圧への不満ははらされる、というわけだ
▼なるほど「つくる会」メンバーもきっと同じ発想、つまり「人権侵害救済法」に反対する明確な根拠がここにあることがわかった。
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