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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2279号/06.07.31

日本の失敗
「第二の開国」と「大東亜戦争」

松本 健一 著  岩波現代文庫(定価1200円)

書籍画像 幕末を第1の開国とし、1915年からの30年間を第2の開国と位置づける松本健一が、「大東亜戦争当時の「第二の開国」がどのように開かれていったかを、史話として物語ろうと」して書いたのがこの本。大衆のもつこの時代のエートス(道徳的貫習)を深く探りながら―それは当然にも右翼思想や国家・民族・国民国家というナショナリズムに彩られた物語となるのだが―書き込んでいる。
 第1の開国に比べ、思想的にも政策的にも内からの変革の力が弱かった第2の開国は、外からの力でおこなわれ、それがアメリカ民主主義への同化、「自己懐疑なき繁栄」をうんだ。開国とは、異質な他者に直面させられ、その他者の文明の方にみずからを開き、自己変革を必須としつつも、他者と同化することではない、と松本は強調する。
 それにしても、松本が探ったこの時代のさまざまな人びとによる多様な言説は、実は現在に連続し通底していることを実感させられる。この時代を読み込む努力が伝わってくる本だ。 (A)

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