錬金術という言葉がある。一般的には卑金属（鉄やアルミニウムなど）を黄金に変成させる技術のこと。でも残念ながら、そんなことができるわけがない。夢は夢なのだ
▼その夢を現実のものとしようとしたのが、ライブドアの堀江社長。ところが「大幅分割で株式の需給バランスを崩し、M＆A（企業の合併・買収のこと―引用者注）の材料提供で急騰した株価を利用して、支配下の投資事業組合に持たせた自社株を売り抜けて利益を得ていた疑い」で、堀江社長への地検による事情聴取が始まり、逮捕となった
▼IT関連産業の「勝ち組」の企業の錬金術の裏面が暴かれた格好だ。起業家のお手本、構造改革の象徴として衆議院選挙に担ぎ出し、応援した自民党の責任も大きい
▼堀江社長は「金で買えないものはない」と発言し、私たちの反面教師となった。こういった発言もふくめ、彼は虚業家として社会全体の鬱憤を晴らすための格好のターゲットとして、徹底的にたたかれるだろう
▼しかし堀江社長の虚業が批判されるなら、労働者を路頭に迷わせたり、関連の中小企業をつぶすなどの悪行をどうどうと重ねた人物が、英雄とされることに問題はないのか。非正規労働者が３割をしめるあり方に問題はないのか
▼資本主義というルールの枠内でも、それらはおかしいはずだ。不景気という理由でそんな手法が許されるというダブルスタンダードは許せない。