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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2263号/06.04.03
 事件はそのとき起きた。私が目撃したのだから、間違いない。おばちゃんが狭い歩道を荷物を抱えながら歩いている。そこへ正面からものすごいスピードで自転車がやってきた。人が退くのが当たり前、といった感じで、いっこうにスピードをゆるめない。ああ、衝突というときに、おばちゃんがやっと身をかわした
▼自転車の方は、何もなかったかのように、過ぎ去っていく。身をかわしたときに、おばちゃんは「すいません」と思わず声を出した。自転車がいった後、おばちゃんは「何で私が謝らなあかんのやろ」と独りごちる
▼アメリカで開いた話に、こんなものがある。車を運転しているときに対向車がぶつかってきた。悪いのは対向車だった。しかし、日本の運転手はおもわず「アイムソーリー」(ごめんなさい)と叫んでしまった。自分が悪くなくても、つい「ごめん」という言葉が出るのはよくわかる
▼ところが問題はその後。謝ったことが、自分の非を認めたとして裁判ではきわめて不利な結果になったのだ。これなど、安易に謝るなという教訓
▼現代の技術革新は、それを使いこなせない、利用できない人びとを周緑化し、切り捨てていく。たとえば職場でも、そのことが「勝ち組」「負け組」の指標とされる。「負け組」は、周縁化されたことで、謝り続けなければならないのか
▼「何で私が謝らなあかんのやろ」という大阪のおばちゃんの声が耳に残る。

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