この国の底流で何が起こっているのか。実はそこに改憲潮流がある、と指摘するのは斎藤貴男だ。赤版で新装なった岩波新書『改憲潮流』がそれだ。蛇足ながら、新装とは、同じ赤版だが、タイトルを囲うイラストとタイトル文字が縦書きになったのが最大の異同点
▼この書で知ったのが、NHKが01年1月に放送したドキュメント番組「問われる戦時性暴力」の制作過程に自民党の次期総裁と目される安倍晋三、中川昭一が介入したことを暴露した朝日新聞の記者が、会員制読者サービス部門に異動になったこと。また、彼と親しい記者も編集局を外れ、あるいは全国に散っていった、という現実
▼たしかに朝日はこの報道後、バッシングにあった。それは、他のマスメディアによるものでもあった。一体、メディアにとっての死ともいうべき権力批判への批判がはやる根底に何があるのか。これも恐るべき現実だ
▼この暴露のあと、NHKは自民党とともに歩む決意をしたように見える。メディア全体を覆う暗雲は、憲法をめぐる立憲主義の重要性をネグレクトする方向へ歩ませる。立憲主義とは常に暴走する国家権力への縛り、基本的人権の保障のことだ
▼改憲潮流は、いまの権力者にとってあるべき国民像を押しつけようとする。メディアの失踪、超監視社会、新自由主義、靖国参拝、米に組み込まれる自衛隊などがリンクし改憲潮流となっているのだ。
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