「私は死後の臓器提供はしません」と書いたカードをもって歩いていた。というのは、私が病院で手厚い手当を受け死亡した場合、家族が臓器提供を望まれた場合、拒否しにくいだろうから。もっとも、法律上は本人の意志が尊重されるのだが
▼しかし近未来には、家族の同意で臓器提供―移植がおこなわれることは、ほぼ確実だ。また、カードを探してもって歩かなければならない
▼愛媛県で発覚した臓器売買事件は、さまざまな波紋を投げかけている。臓器移植推進の人びとからは、日本の基準が厳しすぎる、ドナーが足りなさすぎる、などの声が上げられている
▼世界を見ると、臓器売買はある意味で公然とおこなわれている。スラム街の住民、といっても若い人から臓器を買う、専門のブローカーが暗躍する。あるいは死刑囚から、一応は同意のもとに臓器提供をさせる
▼海外では日本の10倍以上も医療費がかかるのに、臓器移植の条件が緩やかで、ドナーが多い、ということで、そこに行く日本人も多い。プロレスラーだったジャンボ鶴田が移植手術を受けに行き、失敗し亡くなった例が思い出される
▼しかし、ここから見える構造は、人間の体をパーツ化する考え方、貧乏人からは臓器を提供させ、高額医療を負担できる金持ちは生き延びて当然との考え方。そしてそういう生をコントロールする権力構造。さまざまな問題を倫理も含め深く考えることが必要だ。
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