国家に殺された画家
帝銀事件・平沢貞通の運命
片島 紀男 平沢 武彦 著 新風舎文庫(定価1000円)
帝銀事件の犯人とされた平沢貞通さんは、死刑囚として1万日以上を死と隣り合わせにすごした。その間ずっと、彼は描きつづけた。
本書では、事件そのものではなく、画家としての平沢貞通さんを描く。画家としての復権に向けたとりくみは、「もう一つの再審請求」と筆者はいう。本書はその活動の1つだ。
筆者は画家として才能を発揮した頃の美術誌を丹念に追い、いかに将来を嘱望された画家であったのかを記す。人間として、画家として二重に奪われた人生……。支援者と交わした書簡から、描くことへの執着がにじみでる。そしてそれを国家が奪ったことに、怒りがこみあげた。
平沢さんが以前、手記に書いたという「わが亡き後に人権よ甦れ」。この言葉は重い。絵筆をもつこと、描く対象を制限された平沢さんの思いは、再審を実現し、無実を証明することでしか晴れないのだ。各地で無罪を訴える人びとを救う司法をつくるため、私たちはさらにとりくまなくてはならない。巻頭には平沢さんが獄中で措いた絵が収められている。運動に立ち止まったとき、きっと私たちの背中を押してくれるだろう。 (亀)
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