万世一系のまぼろし
中野 正志 編著 朝日選書(定価720円)
戦前の憲法では、「天皇無ければ、国家も臣民も領土もない」と説く、天皇1人が主権者の絶対(神権)天皇制であり、皇国史観と「万世一系」は切っても切り離せないものだった。そして、アジア侵略戦争へ。
戦後の憲法では、米軍の占領下で、その天皇の戦争責任を不問に、国民主権の象徴天皇制にかわった。
しかし、皇国史観の教科書をつくる会の登場や皇位継承問題で男系派が唱えた「万世一系」イデオロギー、さらに安倍首相の「戦後レジームの脱却」など、つまり「戦前レジームへの回帰」派が、教基法改悪に続き憲法の改悪、戦争する国づくりへと奔走している時代にあっては、意図は問題だが、この書は必要である。
昨年まで新聞記者だった筆者はいう「天皇制は、戦後の民主主義社会の成熟度を映す一つの「鏡」のように感じてきた」と。その一方で「万世一系説」を歴史資料から読み解き批判的に検証、昭和天皇の戦争責任問題も問い直し、現代に生きる私たちに「天皇制とは何か」を突きつける。そして「皇国史観を内側から破らない限り、戦前の思想は形を変えて復元されていくに違いない」と。この警鐘には同感である。(MT)
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