「ハンバーガーを待つ３分間」の値段
～企画を見つける着眼術～

斎藤　由多加　著　　幻冬舎文庫（定価495円）

　ゲームプランナーである著者が日常のなかで感じた疑問に自答するエッセイ。小話の形式で読みやすい。
　 著者は、ゲームの取扱説明書を作るさい「これは何をするためのゲームか」が抜け落ちてしまうという事例から、「一般の利用者からすれば一番知りたい大前提が関係者には当たり前すぎて見えなくなってしまっている」、「見えていない重要なものをいかに発見するかが大きなカギ」だと説く。また、行列で待たされるたびに「なぜ待つことはつらいのか」という疑問から、「得たされている状態は、人間の尊厳である「自分の力で未来を選択していくこと」が絶たれたような状況」だと導く。
　 本書の解説によると、ゲーム企画の仕事は、「人びとに共有される仕組みをつくるという意味で、社会の縮図を作るような」仕事だという。この仕事は常識的なセンスが必要だが、同時にそれを疑い、ときにはそれ自体を根底から覆す力が必要だという。これは部落解放運動でも同じだ。
　 社会で、部落で起きているさまざまな事象に目を向け、課題を発見すること、新たな価値を見いだすこと。常に考え、発想する力をもっていたい。　（謙）