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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2331号/07.08.13
 ドラマ「女帝」がおもしろい。10年以上も前の原作だが、現代風にアレンジされている。「お前は下流。金持ちはますます金持ちに、貧乏人はますます貧乏人になる格差社会なんだ、いまは」と、水商売の世界でのし上がろうとする「下流出身」のホステスをののしる場面がいかにも現代風
▼これはシナリオの勝利だ。同じようにシナリオの力が分かるのが韓国映画「私たちの幸せな時間」。冒頭、包丁を手に持った男性と血に染まった刺殺体の場面で、「別れの曲」がかかる。つぎの場面は朝、車のなかで睡眠薬を飲み、自殺を図ろうとする元歌手の女性
▼死刑囚となった男性。自殺未遂3回目のこの女性、乞われて男性の面会に行くが、当初は反目。だが共通点を持っていることが分かる。しだいに心を通わせ、人生の軌跡やこれまで口外できなかったことを語りあう。圧巻は、殺された娘の母親が面会に来て、男性を赦す場面
▼映画では、死刑囚の心情、死刑を執行せざるを得ない刑務官の苦悩、被害者の遺族の苦悩などが描かれる。普通は、これだけてんこ盛りだと破綻を来すのだが、そこはシナリオのうまさでカバーしている
▼人生を見つめ直し、「あなたに出会って、はじめて生きたいと思った」と語る死刑囚に最後には刑が執行される。いま、ここで生きていることのすばらしさと、そのなかで何をなすべきかを考えさせる、すばらしい映画だった。

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