アメリカ下層教育現場
林 壮一 著 光文社新書(定価740円)
ノンフィクションライターの米国体験談だ。著者は、ネヴァダ州リノ市の一番学力が低い高校で、非常勤講師をした。その後、ボランティア団体で、子どもと「歳の離れた1人の友人」として向き合う体験をした。
崩壊家庭に生きる米国の子どもの現実を伝え、後半に希望を探る試みが紹介される。読後、まだそんな問題意識かと、逆に著者が育った日本に、ため息が出た。
自分の生い立ちも重ねて高校生の「再生」に挑む熱気はすぼらしい。だが、問題を抱えた子に、「倫理」「常識」の「躾」しか道を知らず、ベビーシッターではない、と偏見は増幅する。
結局「贔屓教師」にもなり、「殴ることでもできれば、あの精神を叩き直せた」とも思いながら、黒人ボクサーの生き様も示し、「如何に生きるか」を考えさせて講師期限が終了。その後、再挑戦するかのようにボランティアに参加するのだ。
世羅高校校長自殺を米国で紹介しながら、躾とは異質の「差別の現実から深く学び、生活を高め未来を保障する教育を確立しよう」という日本発の実践に著者はたどり着けていない。カバーの文言「子を持つ全ての親、教育関係者必読」の意図を疑う。 (K.S)
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