つぶせ! 裁判員制度
井上 薫 著 新潮新書(定価680円)
裁判員制度廃止というから、現行制度のままではえん罪が多発する、という本かと手に取った。それが思わぬ教科書となった。
「素人が裁判を破壊する」。市民を素人と斬り捨てる筆者は、元裁判官。本書では、裁判員に法律の素養はなく法律にもとづく裁判ができない、だから憲法違反だ、と主張している。なかでも、いかに裁判官が法の知識に富み、判例を書くために苦心しているかが書かれた部分では、「犯行を自白している事件では、安心して有罪の量刑に入れ」る、とのべている。矛盾だらけの「自白」がまかりとおるはずだ。
また裁判員の守秘義務について、不公平さを強調する。その根拠として、袴田事件の元裁判官が「無罪の心証があった」と明かしたことをあげ、矛盾が現実化した、という。元裁判官がどれだけ苦しい思いで打ち明けたのかにはふれず、「守秘義務違反だ」と斬り捨て、裁判員制度への不満にすり替えているのである。
日本の裁判官の人権への認識は、こんなものなのだ。こんな判事ばかりとはいわない。しかし、市民感覚とかけ離れた裁判官がいるのが現実だ。市民の声で司法の民主化をすすめていくはかない。 (亀)
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