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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2383号/08.08.18

甲山事件えん罪の
つくられ方

上野勝・山田悦子 編著  発行・現代人文社/発売大学図書(定価2000円)

書籍画像 甲山事件が起こったのは1974年3月。殺人容疑で山田悦子さんが逮捕されたのは同年4月、当時彼女は22歳だった。その後、25年間、権力による暴力と彼女は闘ってきた。えん罪から解放されて9年。山田さん自身が甲山事件が「どのように作られたか」を本にした。冷静な筆致と感性の豊かさを滲ませた文体だったが、過酷な経験を書く作業は、どれほど力がいっただろうか。
  一節にこうある。「人権が守られない社会の厳しい現実に対し、人権を守るために法を作り、人間社会を律してきた法の闘争の歴史を私は知らなかった」と。当時、テレビをつけると彼女の姿がさらされ、報道によるすさまじい暴力のさなかにもあった。みずからの死をみつめていた。当時の自分を凝視し、記す。
  甲山事件を法の闘争史の一里塚として位置づけ、法の思想、権力によって積みあげられた日本の法曹界のありよう、歴史に「無答責」である日本への視点など、思想をとぎすましてきた山田さんの歩みを知る書である。裁判員裁判の問題にも迫る。その厳しい人生がわたしたちの財産であることを統(す)べらせ、読んだ。 (汝)

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