隠居宣言
横尾 忠則 著 平凡社新書(定価760円)
これまで「画家」宣言などしてきた著者が、71歳を過ぎた2007年春、「隠居」を宣言。本著は、「隠居」の理由や背景、日常生活、健康などについてのべている。
オビに「隠居とは肩の力を抜いた生き方」とあるように、著者のいう「隠居」とは「人生をより楽しく創造的に生きること」である。やらなければならない仕事に忙殺され、本当に好きなことをやる時間が失われていくことを実感した著者が、みずからを見つめ直したとき、自分の原点に回帰したというふうに読んだ。
かつて部落解放文学賞の土方鐵・前代表は「書くことは自分が変わること」といい、鎌田慧・代表も「書くことは生きること、きりひらくこと」とのべている。本著の一節「グラフィックは経済生活で、絵画制作は人生である」は、識字のあり方と重なる。文字も絵も、「表現すること」とは、自分と真摯に向き合い、積極的に切りひらいて生きる自分の生きざま、つまり人生なのだ。
「しなければならないこと」に追われることから、「したいこと」にシフトする思考と実践。人生のなかで生きる価値を何に置くのか。生きざまこそ表現だと、読みながら共鳴した。 (謙)
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