防衛黒書
林 信吾 著 ちくま書房(定価820円)
「彼ら(日本人)は、軍隊を持ってもそれを軍隊と呼ばず、戦争を起こしてもそれを戦争とは呼ばないであろう」。敗戦後、帝国議会内の小委員会で決められた日本国憲法第9条の修正案を見て、当時の中華民国の代表が、極東委員会で危ぐを表明した。「事変」と称して開戦した日本人を忘れない指摘だった。だが結局、極東委員会は、勝手な解釈を許さない厳格な記述に修正させず、憲法に「シビリアン条項」の追加を求めた。それが第66条第2項だった、という。
第9条でこれから軍人は存在しない。なのに、国務大臣は「文民でなければならない」という条文だ。著者は、「極東委員会=戦勝国側が警戒したのは、あくまでも「日本軍国主義の復活」であって、日本の再軍備それ自体でなかった」と指摘し、その後の「国防」の流れを探る。
良書ではない。「護憲派」への偏見に毒された立論もあり、麻生首相に似た悪らつな表現もある。ただし、兵器や防衛産業の専門的視点から「兵器輸出が長い目で見て決して国益にならない」などと説く部分には、独自の説得力がある。「すべての道はローマに通じる」。ありふれた右翼言論の部分をスルーすれば、専門的視点に意外な程がある。(K・S)
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