アラブ、祈りとしての文学
岡 真理 著 みすず書房(定価2800円)
「アラブ、祈りとしての文学」が届いたのは昨年のクリスマスイブ。装丁の「蒼」と表題をみただけで、筆者の心とつながった。その祈りさえ奪うようにはじまったイスラエル軍によるガザのパレスチナ人への無差別殺戮。パレスチナ人の恐怖、絶望、悲嘆、憤怒、痛み。岡真理さんはひたむきにパレスチナからの情報を日本語で訳し、発信した(『ガザ通信』が青土社から発刊)。
アラブ文学の研究者である彼女はパレスチナの人びとの悲しみから生まれた文学の向こうに、いつも自分の顔を探している。パレスチナ人と「日本人の自分」、みずからのいのちを一筆も記すことのない民衆と、かれらを表現することが権力ともなる「知識人に連なる「自分」」。自分との果てしない会話のなかから鋭利な言葉を選びとる。
作家とは「彼岸と此岸のあわいで、起こらなかったけれども、もしかしたら起こりえたかもしれない未来を夢見続ける死者たちの息づかいに耳を澄ます」生き残った者であり、みずからも非在の購いとして「書く」。
文学はいま起こる現実にたいして非力であるが、国家をこえ、人間の尊厳への想像を鍛える、祈りであると……。 (汝)
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