「戦争体験」の戦後史
――世代・教養・イデオロギー
福間 良明 著 中公新書(定価840円)
戦争の記憶の風化がさけばれている。戦争の悲惨は、被害として語られるときは餞舌でもあった。しかし、それは、侵略の結果の一部でしかなく、加害への想像力は押しとどめられてきた。その意味で、私は戦争の伝え方について多くの疑問を感じてきた。「慰安婦問題」では、戦後世代の論争に終始し、当事者としての元兵士たちは沈黙し、NHKをはじめとするメディアは見事な「バランス感覚と中立性」を露呈した。
本書の帯にあるように「あの戦争はどう語られてきたのか」の問いかけは重い。私は、象徴という名の身分制(天皇制)の存続という不幸にその典型をみているが、それを不問にしたまま語られる戦後民主主義に懐疑をもちつづけている。
本書を読むと、真摯な戦争への論議よりも、左右ともにイデオロギー的な鎧を隠し、あるいは露骨に政治的な大立ち回りを演じてきたように読んだ。とくに、「わだつみ像」破壊への戦中派の批判は、加害者性を欠落させている。国民はといえば、悲惨と被害しか語らず、ついに、加害への想像力はもつにいたらなかった。田母神などという妄想オヤジが跋扈しているのは、その帰結でもあるのだろうと思っている。 (安)
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