強いられる死
斎藤貴男 著 角川学芸出版(定価1500円)
真冬の東尋坊(福井県坂井市三国町)の描写から始まる。訪れたのは09年1月26日。この断崖絶壁に異変が起こり始めたのは08年11月頃で、これまでにも増して自殺志願者や自殺企図者が集まるようになったという。きょうまでの3か月近くで15人を救いだした、と語るのはNPO法人「心に響く文集・編集局」代表。15人のうち7人が派遣労働者で、職を失い絶望し、ここまで来た、と。住居、職探しなど、やり直せるようになるまで面倒をみる。
この本は、遺族や関係者に直接会い、その取材を通じて、さまざまな、それぞれの背景や要因に迫っていく。筆者の斎藤もあとがきで、「資料を集め、文章の構成を考えて、原稿を書く作業に入る頃には、精神的に参っているのが常だった」と書いている。1人ひとりが、どう追いこまれ、どう苦しまされてきたか、家族や同僚の思いとあわせ、文字として刻まれていった。
しかし、けっして絶望の固まりにはなっていない。自殺対策支援のためのNPO法人「ライフリンク」代表などとの、てい談で、自殺者が減らないのは、たんに対策がなされてないからであることを明確にする。
「原因は新自由主義」とのお題目をとなえるだけの本ではない。(E)
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