教師花伝書
～専門家として成長するために～

佐藤　学　著　　小学館（定価1260円）

　同和教育実践の柱である学力保障が岐路に立つ。近年、授業改革に迫られ、多様な学びへのチャレンジが打ち出された。「低学力」の確かな解決に向け、個と集団の力を活かした創造的学習が求められた。いくつかの試みのなかで、著者が提唱する一斉授業から「学びの共同体」への転換に辿り着いた。ここでの学校と教師のミッションは、子ども１人ひとりの学びを保障することにある。
　本書は、その理念を世阿弥が著わした「風姿花伝」に一貫する学びの思想とその作法に即して展開する。「教師が授業を『妙花』に洗練させる『心』と『種』となる『態』（わざ）を学ぶ道筋」について実例を適して提示している。歴史的転換期を生きる教師に、教える専門家と同時に学ぶ専門家として成長する必要性を説く。
　これまで、授業法の「指南書」はあったが、教師の「稽古」（学び）の構え（思想）や作法（身体技法）を伝授する「花伝書」がなかったと著者は指摘する。
　「今こそ、教師として『私』を語り、教室の固有の子どもを語り、自らの実践経験を自らの言葉で語ることが重要なときはない」
　凛然としたことばに鼓動する。
　同和教育は、自らの生き方を常に問いかける。　　　　　（T）