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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2438号/09.10.05

福祉ってなんだ

古川 孝順 著  岩波ジュニア新書583(定価780円)

書籍画像

 高校時代からボランティア活動をしていた私は、人形劇をもって大人に混じってあちこちの児童施設をまわり、社会の現実と矛盾を学んでいった。大学への進学に社会福祉学科を選んだ。福祉といえば今日のように商業化するとは考えられない時代だった。同窓生はみな「損得」ではない熱さ思いで社会に向かい合おうとしていた。今でも敬愛している。
  その学びのなかで知ったことの第1は、福祉とは世の中の矛盾を学ぶということだった。よく知られる1609年のイギリスでの「エリザベス救貧法」は貧困者への救貧対策というよりも治安対策の側面がつよかった。そこから導き出されるのは、社会矛盾を隠蔽する学問であり、対象者にたいして抑圧する側に立つ事実に慄然とした。それを裏付けるうな事件も各地の施設で惹起し、福祉のほころびは私の前に立ちはだかった。本書を読みながら、懐かしい日日を思い出すことになった。
  本書は、入門書としてはややむずかしいが、福祉の歴史やなりたち、仕組みなどを概説する。人権の視点がなく大変残念。これからの福祉は人権理念の理解が不可欠であることは指摘をまたない。部落解放運動はその先端に立つものでありたい。(安)


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