消費税をどうするか

小此木　潔　著　　岩波新書（定価700円）

　現下の危機は、世界同時不況という経済危機にとどまらない。それは、貧困や格差の拡大という社会的危機であり、地球規模の温暖化問題などを抱える環境の危機であり、同時に財政的危機、という４つの危機だと筆者は指摘する。では、誰のために何をする政府を求めるのか。それは国民生活の危機を克服し、人間本意の経済成長と真に豊かな社会を実現する政府だ、という。
　 そのために必要なのが、ケインズがめざした福祉国家、つまり資源再分配、所得再分配、経済安定化機能なのだが、それらは市場原理主義―新自由主義政策のなかでことごとくうち捨てたれてきた。ならば、市場の外部にある政治の介入やセーフティネットを、共同の負担で再構築する必要がある。それは法人税や高所得者への減税というこの間の政策に折り合いをつけながら、前提として▽景気回復を第１条件とする▽新たな税＝消費税増税を所得再分配強化型政策の一環とする、を示しながら、この社会をどうするか、４つの危機を国民的合意を形成しながら、どう具体的に克服していくのかの道筋を、ともに考えるための視点を提供しようというのが本書だ。
　 民主党政権のもとで今後必要となる論議の先取り的提起だ。　（A）