「力ある学校」の探求

志水　宏吉　編　　大阪大学出版会（定価3045円）

　学校教育は制度疲労を起こしている。暗記・受動型の苦役的学習観。学ぶ楽しさや手ごたえを実感できない授業。表面的な人間関係のまんえんと心の深いところで共感し合える仲間とつながることのむずかしさ。こうした学校生活に魅力を感じることができないことが、「いじめ」「不登校」「学力低下」などの原因の一部をなす。行き先不透明な社会に生き、居場所を失った子どもたち。くわえて「格差」拡大のなかで差別の実能も悪化している。
　これにたいする処方箋は議論百出。
　著者は、「効果のある学校」から「力のある学校」へという概念の拡張をはかり、「力のある学校」の概念化こそが「学力低下の克服」という現実的課題を解くと考え、本書では「低学力層」の子どもたちの学力を引き上げることに成功している学校を量的質的調査の両面から考察し、学校作りに不可欠なファクターを導き出している。地域とのかかわり、生徒たちの息づかいをあたたかい目でレポートしているようすも見逃せない。
　個個の教師のがんばりが確かに「低学力」の下支えをするが、一方で「格差」を生み出した政治や社会システムを変えるために闘うことも解放教育運動の真髄である。（T）