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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2424号/09.06.22
 身も心もぼろぼろになった男が最後に帰ってきたのはリング。俺のふるさとはここ、観客が家族だ、と叫ぶ。対戦相手も、よくいったと喜ぶ。映画『レスラー』の最後のシーンだ
▼過去に栄光の時代をもつだけに不遇の現在が際立つレスラー、ランディをミッキー・ロークが演じる。そこに役者とキャラクターが重なる。主演男優貫を取った作品だけのことはある
▼ランディは愛する家族にも捨てられ、恋人にも去られる。試合後に突然倒れ、心臓の緊急手術で命だけはとりとめたが試合ができる体ではなくなった。だが、観客の歓声を聞くと、命を削ることがわかっていても、体が自然に動く。レスラーの悲しい性だ
▼悪夢が現実になったのがプロレス団体ノアの社長で看板レスラー、三沢光晴の試合中の死去。バックドロップという後頭部から落とされる技をかけられ、受け身を取り切れず、頭部に損傷を受けたのが原因だ
▼放映打ち切りのなかでの今後の経営などさまざまなストレスもかかえていた。体調が悪く引退も漏らしていた。だが、試合で歓声を聞くと体が動いてしまう。そこから悲劇が生まれた
▼なにげない市民社会のなかにも、悲劇の裂け目が口をあけている。社会の周縁など差別が露骨にあらわれても多くの人が目を向けないところから、それははじまる。いまの労働のあり方もそうだ
▼目をこらすこと、最初の段階から声を上げ、とりくみをはじめることが重要だ。

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