「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」とは『歎異抄』の有名なか所、悪人正機説。この言葉そのものは、法然の伝記にある。このか所を「善(え)え奴が往生するんやさかい、ましてや悪い奴がそうならんはずがない」と関西弁に訳したのが、川村湊談の光文社文庫版『歎異抄』だ
▼当時、口語調で書かれた『歎異抄』を、現代の口語調、関西弁にしたのが、この本。じつにわかりやすく、「他力」、一心に「阿弥陀如来」の救いを願うことだけに専念する、ということが語られていることが分かる
▼「念仏をとなえても躍りあがって喜んだりするような気持ちが、ちいともわいてけえへんで、また、はよう浄土に行きたいいう心がわいてけえへんのは、どないなわけかいな」と唯円が親鸞に聞くシーンがすごい。そんな煩悩がある「哀れな人びと」こそ救われる、死を喜べないなら喜べないままに念仏し往生を願うことしかありえない、救われようと信じるのではなく、救われているからこそ信じることができるという逆転があると川村は解釈する
▼日本の対米政策、とりわけ沖縄の米軍基地の問題などをめぐって民主党を中心とした新政権のプレが指摘されている。あるいは米国を震源地とした新自由主義―市場原理主義をどうするのかといった課題でも
▼『歎異抄』は、もともとの教え、主張が歪められていくことへの、異への欺きから編まれた。新政権は歎異をさせないでほしい。
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