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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2446号/09.11.30
 「日本人の歴史をとりもどす」というのが、司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』の読み方だそうだ。「要するにロシアはみずからに負けたところが多く、日本はそのすぐれた計画性と敵軍のそのような事情のためにきわどい勝利をひろいつづけてきたというのが、日露戦争であろう。/戦後の日本は、この冷厳な相対関係を国民に教えようとせず、国民もそれを知ろうとしなかった」
▼アジア・太平洋戦争のときの日本はおろかだったが、日露戦争まではすばらしかった。植民地にならないために戦争はしかたなかったと公然とのべ、「アイデンティティを失いかけていた」日本人に勇気を与えたのが、この作品だというのだ。これを原作にした、3年間全13話の大企画ドラマの放映がNHKでいよいよはじまる
▼この原作のはらむ問題をコンパクトに批判する好著がでた。『雲の先の修羅-『坂の上の雲』批判』(東信望)だ。筆者は半沢英一・金沢大学教員。雲の上の修羅とは、幸田露伴のアジア・太平洋戦争の修羅を嘆く俳句からとったもの
▼日露戦争は祖国防衛戦争だったという虚構を暴き、朝鮮・中国への差別・抑圧、侵略戦争への道を意図的に隠す作品であることも明確にする
▼付録の「戦争の数学」では、日本軍による兵の生命無視の根拠も数学的に示す。この筆者、司馬作品の再審をおこなっているが、狭山再審で脅迫状と石川さんの文字の相違を示した数学者でもある。

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