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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2453号/10.01.18

アマテラスの誕生

溝口 睦子 著  岩波新書(定価740円)

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 高校時代、古文の教師にさそわれて古事記を読んだ。結局、この試みは最後までつづかなかったと記憶している。ただ、神話として、あるいは物語として読むことを学んだ。
 本書の題名にひかれて読んでみたが、「神話研究」のロマンを堪能した。
 そのロマンは明治政府の国家神道政策のもとでの歴史のねつ造による歴史の興亡でもあった。筆者が指摘するように、その後の歴史や民俗学といった領域でもこのアマテラス=土着神は学問の前提として語られてきた。だが筆者は「…そうではなく、もし、「日本書紀」の天孫降臨条本文がいうように、国家神がタカムスビという神だったら、まったく異なる天皇制像が現れる可能性があるのではないか」と問題意識をのべる。
 それは、「高句麗・百済・新羅など朝鮮半島の諸王国をはじめ、広く北方ユーラシアを含む北東アジアで共有されていた文化、つまり王権文化を、そのころ日本も取り入れた」のであるという。かつて、「平成」天皇は「自らの先祖は大陸にルーツをもつ」といったことがある。いまだ天皇制の呪縛が多くのタブーを生みだしている。だが、科学として歴史に向かい合うとき、日本も他の国と変わらない、権力闘争の歴史であることがよくわかる。  (安)


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