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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2482号/10.08.16

国家神道と日本人

島薗 進 著  岩波新書(定価800円+税)

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 太平洋戦争の敗戦直後。占領軍のGHQは、俗にいう「神道指令」を出した。私たちはこれでおぞましい「国家神道」は解体されたと認識してきた。しかし、国家神道と一体で担われ、その核心でもあった皇室祭祀(皇室神道)にはまったく手がつけられることがなかった。国民に天皇崇敬を広め、国家統合を強化するために近代になって作られた宗教システムだった。それが生き延びたのは、象徴天皇制が延命したことと無関係ではないだろう。
 本書によれば、国家神道の中核でもある皇室祭祀は、戦後「内延のこと(=私的なこと)」とされ見過ごされてきた。毎朝、国家公務員である侍従が天皇に代わり代拝しており、年中行事にあたる祭祀は年に20回をこえるという。このうち大祭のいくつかは、内閣総理大臣、国務大臣、国会議員、最高裁判事、宮内庁職員らに案内状が出されるという。これらの人たちが出席し、国家的な行事として神事がおこなわれている。
 戦後の信教の自由、政教分離の闘いは、この現実と危険性を強く指摘してきた。決して天皇は「空虚な中心ではない」と著者はいう。戦前回帰の勢力の蠢動とともに、宗教でマインドコントロールされている現実に緊張感は必要だろう。 (安)


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