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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2487号/10.09.27

攘夷の幕末史

町田 明広  著  講談社現代新書(定価720円)

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 金の王派と砂漠派が抗争する。そこへ鞍馬天狗までがからみ、理解不能だがチャンバラだけを楽しむ、というのが子どもの頃の幕末理解だった。いうまでもなく、金の王とは勤皇であり、砂漠とは佐幕のことだ。
  かくのごとく、幕末の日本の政治地図はきわめてわかりにくい。しかし、そこを理解しやすい本が出た。
  「江戸時代を通じての「日本人総壌夷」の事実、および幕末の政争の対立軸である「大攘夷」「小壌夷」思想の理解によって、複雑怪奇な幕末史が少しずつ氷解しはじめ」るとの立場から執筆されたのがこの書。
  明確になるのが、大攘夷とは無謀な壌夷(小旗夷)を否定し、「通商条約を容認し、その利益をもって海軍を興し、十分な戦闘・防衛体制を整えたうえで、大海に打って出るとする、つまり、帝国主義的海外侵出をおこなおうとする」ものであることだ。坂本龍馬も東アジア的規模での壌夷論、つまり朝鮮、その後の清の征服、ロシアとの対決も視野に入れていたことが明らかにされる。それは、龍馬死後、日本帝国によって担われることになる。その最終仕上げが、「大東亜解放戦争」というわけだ。
  壌夷思想の根源の国学、「日本書紀」はまだ生き延びている。(A)


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