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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2473号/10.06.14
 針生一郎さんが亡くなった。85歳だった。部落解放文学賞の評論部門の選者を長く務めた。大学では国文科から美学へかわった。だから美術評論家とよばれたが、本人は文学に多くの関心があった
▼遅刻魔として有名。時間を守ることはまれ。だから、早めの時間をいうのだが、それも裏を読まれ、その分、遅れて登場する。昨年の文学賞の表彰式では、とうとう最後まで姿を見せなかった。が、夕方、会場のホテルから連絡が来た。関係者の人が着かれましたと
▼毎年1回、選評会でお会いする機会があった。評論の敷居を低くして、応募作品を増やし、そのなかで人を育てていく、というのが針生流の方針だった
▼今年の選評会で、今後の評論のテーマとしてほしいものとして、「日本の中国侵略、朝鮮の植民地化のなかに、部落差別の問題というのがどういう形で反映していたか」をあげた
▼選評会後の飲み会も楽しみだった。戦前の中国共産党は、捕まったらすぐに転向声明書に署名して外へ出ろ、のちになってそんなことは問題にしない、直ちに現場に復帰せよ、という指令を流したことを針生さんに聞いて初めて知った
▼著書の一節に「一挙の勝利はどこにもありえず、不服従、非暴力、サボタージュ、ボイコットなどの柔軟で巧妙なたたかいがかさねあわされるべきことを、もういちどかみしめる必要がある」とある。したたかに闘うことの意味をかみしめたい。合掌。

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