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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2490号/10.10.18
 「塀の中の中学校―生徒は受刑者・義務教育未修了」というテレビドラマは、芸達者な役者にも恵まれ、よくできた作品だった。長野県の公立中学校の分校として、1年間で3年分の授業を長野刑務所のなかでおこない、修了すると義務教育である中学校卒業の資格がもらえる
▼ドラマではさまざまな事情で中学校に行けなかった受刑者5人が、犯罪にいたる経緯と現状を語る。それは、5人の希望を失なった人生の軌跡とともに、犯罪を醸成する絶望的なまでの社会の現状を静かに映し出す
▼5人にかかわる教員の1人は、獄中者への懇切丁寧な教育指導のあり方に疑問をもち、身が入らない。それは同時に自分自身の現状と将来への不安の裏返しでもあった
▼知ることは世界が広がること、努力すれば世界がだんだんと獲得できることが、受刑者たちに理解されるようになる。教える側、教えられる側の両者が変革していく姿が、画面を通じて分かってくる
▼差別の恐ろしさのひとつが、人間のもつ豊かな可能性のあらゆるものを奪っていくことだ。自己実現への道が閉ざされることだ
▼部落解放運動のなかでは奪われた文字を取り返すものとして識字運動が長年とりくまれている。ひと文字ずつとりもどすことが、認識を深め、感性を豊かにし、可能性を取り戻すことにつながる
▼そうした変革の姿に人びとが感動する。感性を揺さぶる変革の闘いが、人びとを結集させるのだ。

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