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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2496号/10.11.29
 NHKの連続ドラマ「龍馬伝」が終わったとたん、「坂の上の雲」の第2部がはじまる。今回、最初の場面では子規の死期が描かれるはずだ。ところが、これを描くことで、原作では日清戦争から日露戦争の過程での朝鮮、中国、台湾などへの侵略の事実が捨象されてしまう。つまり、覆い隠されるのだ
▼龍馬伝では、大政奉還を成し遂げたところ。龍馬は、慶喜の決断を評価しながら、だが、それだけでは人びとの生活はよくならない、と新たな社会の構想をめぐらせる
▼だが、大政奉還は龍馬にとって新たな敵をつくる。薩長もそうだ。だからこそ、龍馬暗殺は謎につつまれる。そこがまた、おおかたの龍馬ファンにとって推理をめぐらせる楽しみともなっている。げんに、暗殺をめぐり多くの本が出されている
▼人は未来を見通すことはできない。だが、想像はできる。創造でなくてもだ
▼新しい社会が、他の国の人びとの苦難と犠牲のうえに成り立つなら、侵略のうえに成り立つなら、それは龍馬の想像をこえた、不幸なものであったに違いない。だが、それを見事に肯定するのが「坂の上の雲」が描く歴史観だ。それは仕方がなかった、と
▼そんな原作者ですら、軍人賛美になりかねないと、映像化には慎重姿勢をとり続けたのだ。なぜ、いま、「坂の上の雲」なのか。大きな疑問がわく
▼近代のアジア侵略の道ではないあり方が、いまこそ模索されなければならない。

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