すべてを明日の糧として 今こそ、アイヌの知恵と勇気を
宇梶 静江 著 清流出版(定価1700円)
「私は嫁に行かない! 小学五年生からの勉強をやり直すために、中学に行くんだ!」。姉の死を見送った19歳の秋。囲炉裏端での結婚話に、彼女は本心を家族・親族に明かす。小学校高学年から働きつづけ、すでに北海道では「結婚する気はさらさらなかった」。「和人に捨てられるお姉さんたち」を何人も見たし、「アイヌの青年と結婚しても、差別される生活や貧困から抜け出せ」ないと思ってきたからだった。
本書は、首都圏で40年近くアイヌ復権にとりくんできた宇梶静江さんの自伝エッセイ。「このやんちゃばあちゃん、自分で自分の人生をエイヤッとばかり大転回させたこと、これまでに三度ばかり」だそうで、その最初の大転回が、このとき20歳で札幌の中学へ入学したことだった。
その後、宇梶さんは厳しい差別に札幌での就職は断念し、卒業式翌日に上京。やがて和人と結婚するがアイヌを隠す生活に疲れ、38歳で新聞でカミングアウト、翌年東京ウタリ会を設立する。2度めの大転回だ。
3度目の大転回は63歳のとき。アイヌ刺繍の勉強に札幌へいったことが、アイヌ刺繍と古布を組み合わせた「古布絵」創造につながった。
「アイヌである私」への再生を、語り口調でつづった良書。(K・S)
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