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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2536号/11.09.26

「生き場」を探す日本人

下川 祐治 著  平凡新書(定価740円)

書籍画像

 転校生がやってくるとどこか華やいだ空気を私は感じた。農家として数世代おなじ土地にしがみついてきた家に育つと「転校」などということは考えてもみないことであり、それは自然ではないことだった。だからこそ、知らない土地の匂いは私の想像力を駆り立てた。
  本書はアジアで暮らす人たちのこもごもの人生が描かれる。その姿は、そのまま息苦しい日本の姿をあぶり出してもいる。「転校」どころか異国へ「移住」してしまった人たちの一見わがままな「選択」と「決断」が潔くも感じる。本の帯には「日本で「行き場」はないけれど、アジアなら「生き場」がある」と書かれている。
  毎年、3万人が自殺している日本。「生きづらさ」を生み出しつづける国に「同化」できない人がいても不思議はない。それは決して悪いわけでも、本人に責任があるわけでもない。今回の大震災にしても「がんばれ」のかけ声がどこかむなしいのは、こんな社会のどこに向かって「がんばれ」ばいいのかと思ってしまうからだ。
  私たちは何に恐れを感じているのか。棄ててみなければ手に入れられない「生き場」もあるということなのだろう。      (安)


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