薬物、野球賭博、そして八百長。相撲協会をめぐる問題が3件も続く。今回の八百長騒動は相撲がもつ伝統や興行の本質にかかわるものだけに事態は深刻
▼土偶や埴輪に力士が出てくるほど、大陸から伝播した相撲の歴史は長い。豊作を祈る農耕儀礼と農業民の余暇を楽しむ遊びとして相撲は発展してきた。豊作をもたらす精霊との勝負となる神事では、必ずいい精霊がかつ、という八百長が古代からおこなわれた
▼近世に入ると勧進相撲がはやるが、有名諸大名をタニマテにもつ力士どおしの相撲では決着のつかない相撲は「預かり相撲」として、引き分けなどにしていた。大名の面子をつぶさないためだ。江戸相撲と上方相撲の年4場所ではそれぞれご当地の横綱が勝つことが暗黙の了解だった。それでこそタニマテは喜ぶからだ
▼ひるがえって現在も、たとえば、力のある力士が弱い相手にすぐ勝つのではなく、相手の力を最大限引き出してやり、よくここまで追い込んだ、という状態でたたき伏せ、力の差を見せる。力をつけてきた力士に負けてやり自信をつけさせる。土俵に登り、相手とぶつかり、あうんの呼吸ですべてを飲み込み負けることがある
▼世間は白黒、善悪の二元論を相撲に求める。だが、虚と実の曖昧さこそが相撲の伝統の根底にある。世間に相撲が八百長することは許されないだろう
▼起承転結のない今回のコラム、結局独り相撲でしかなかったのか。
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