岩波書店の『図書』といえば1938年発刊の、といっても戦争中は一時休刊したが、新刊案内とともにエッセイも含めた書物に関する情報誌。「本を書いた人、本を読む人、そしてまだ本を読んでいない人がいる。そしてこの『図書』がいつも本と人のあいだのどこかに」いる役割を果たしたい、と復刊1号にはある
▼同誌で連載されたエッセイや論文が単行本化されることも多かった。また掲載される各社の書籍広告は読書人を楽しませている。『図書』をイメージして、各社から同様の月間誌が発行された
▼だが今年に入って、『月刊百科』(平凡社)、『本の話』(文藝春秋社)があいついで事実上の廃刊になった。それも突然。雑誌維持の経費を考えると、Web化の方が安くつくからなのか
▼奈良県三郷町の「下之庄歴史研究会」の解散にともなって『雑学』が廃刊となった。「部落問題への入り口は多様にあっていいから」と雑学とタイトルがつけられ、何の規制もない自由な誌であったとは、上野茂代表の弁
▼78年に結成され89年から『雑学』発行。37号におよんだ。シンポジウムや掲載論文は単行本化され、執筆者相互のみでなく多くの読者にも刺激を与え続けてきた。部落史観の転換も積極的に提唱してきた
▼自主的なさまざまな力の衰退は失うものを作り続ける
▼もっとも同研究会を母体に新たな発展が模索されていると聞き、安心している。飛躍こそが、問われているのだ。
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