pagetop
部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2548号/11.12.19
 乃木希典大将が明治天皇の葬儀時に、妻を道連れにして殉死した。乃木には日露戦争時の旅順侵略、その要となる203高地占領をうまくやりきれず、1万2千人以上の戦死者を出したが明治天皇がかばったことに恩義を感じていた。それゆえの殉死だった。森鴎外外などは美徳として小説化した
▼この203高地略奪戦を2回にわたって描いたのが、NHKが3年間かかって映像化し、放映する「坂の上の雲」だ。あと2話はロシアのパルチック艦隊との戦闘-日本の勝利が描かれるはずだ
▼いまさら戦意高揚の番組でもあるまいし、と見ていると騙されるので、ご注意あれ。隠された意図が、今回の番組の解説的ナレーションで示された。見事だった
▼その中身は、かいつまんでいえばこうだ。近代に入って、明治期に国民国家ができた。国家は国民に福祉などをおこなうだけでなく、兵役の義務を課し、国家のために死ぬことを求めた。国という偉大な共同体、天皇のために死ね、ということだ
▼ケネディの有名な演説に、国家が諸君に何をなすのではなく、諸君が国家のために何をなせるかを考えよ、というものがある
▼これも新自由主義時代のイデオロギーにぴったりだ。一人ひとりの国民のために国があり、国家がそのためにはたらくのが当たり前、というのが近代のイデオロギーのはず。それを転倒させることがいまの為政者の狙い。そこへ導くのがNHK「坂の上の雲」なのだ。

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)