物語「京都学派」 知識人たちの友情と葛藤
竹田 篤司 著 (中公文庫 定価914円)
ノーベル賞受賞に沸き返る京都大学。産学協同もきわめれりの様相だが、ここを軸に「京都学派」とよばれる研究者の集団があった。日本独自の哲学を作りあげた西田幾多郎(きたろう)とその弟子であった田辺元(はじめ)を楕円のように2つの中心とした哲学、歴史、教育、宗教などを研究するグループだ。
(東京)帝国大学に続いて、日清戦争での日本の勝利を契機につくられたのが京都帝国大学だった。東京帝大の3分の2という規模が決められ、当初から中央の大学を追い越すことができない枷がはめられた。だが、哲学だけは違った。選科修了という学歴しかもたず、世人からはまったく無名の西田が助教授として招かれたのだ。それは、偶然と友情と西田の実力だった。だがこれだけでは学派とはなり得ない。元来は弟子であった田辺が西田を批判的に乗り越えようとすることが、西田の許容の広さと相まって学派の形成につながった。この本は、「京都学派」の生成、発展、終焉という物語を新資料を駆使しながら描いたものだ。
モナド集団として学派の個個人の人間くさいエピソードがあふれる。その根底にあるものこそ、西田哲学のモットー、「自分で考える」であることが分かる。 (A)
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