ナチ政権でユダヤ人虐殺を担ったアイヒマンのことを「悪の凡庸さ」と評したのはハンナ・アーレントだった。アイヒマンへの裁判を傍聴した彼女が著した、『イェルサレムのアイヒマン』は大きな反響をよんだ
▼アイヒマンは「自発的に(ユダヤ人虐殺を)おこなったことはない。善悪を問わず、自分の意志は介在しない。命令に従っただけ」とくり返し主張する。アーレントは世界最大の悪は平凡に人間がおこなう悪、と書いた。あるいはユダヤ人指導者がアイヒマンの仕事に関与していたことを裁判での証言をもとに書いた
▼アイヒマンを悪魔、鬼畜と書くと予想していた人びとは「悪の凡庸さ」をナチの犯罪の免罪、アイヒマンへのユダヤ人関与を非難だとうけ取った
▼アーレントが主張したのは思考できなくなった平凡な人間が、いつでも、どこでも平気で残虐行為をおこなうこと。ユダヤ人に抵抗と協力の中間に位置する何かがあったはずという問いを投げかけることであった
▼映画「ハンナ・アーレント」はこの時期の彼女と周辺の人びととの論議や葛藤を描く秀作だ
▼「若い世代をみてみろ。彼らは「暗い時代」との対決を避ける。親世代が戦わなかったといって恥じるか、不名誉だといって非難する」というのも映画のなかでのセリフ
▼私たちもつぎの世代に、子や孫になぜ暗い時代を阻止できなかったのか、といわれないように秘密保護法案成立阻止の闘いに全力をあげよう。
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