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いま、日本の住宅政策は大きな転換点を迎えようとしている。住民参加型まちづくりへの関心が高まり、部落内外を問わず新たにさまざまな実践が各地でとりくまれはじめている。また「同和」行政、福祉行政も大きな転換点を迎えている今日、部落解放運動は、「住民参加型のまちづくり運動」「多様な住宅づくり運動」という大きな3つの観点から、地域生活圏である小学校、中学校の通学区域である「校区」をおもな単位とした新たなまちづくり運動の推進が求められている。2
部落の住環境改善、総合計画策定といったまちづくり運動は早くから住民参加ですすめられてきたが、ここ数年、国をはじめ地方自治体で新たにまちづくり活動支援制度が創設、行政主導のまちづくりから住民参加型のまちづくりへの転換を図る新しい試みが生まれてきている。これらのまちづくり活動支援制度は住民、専門家、行政の3者が連携をとり、自分たちのまちづくり構想をつくり計画をすすめていこうというもので、これら連携のもとで部落解放新総合計画の策定をすすめていく試みが求められている。3
部落を劣悪な環境のまま放置した差別行政の糾弾に端を発した運動は、一定の成果を生んだものの「特別措置法」という時限立法に依拠した結果、部落完結型事業、部落改善型まちづくりという結果をもたらした。「地対財特法」の法期限切れを間近に控え、「住環境はほぼ改善された」という表面的な認識が先行する事態は、行政責任を放棄することにつながりかねない。とくに部落内の公営・改良住宅は、ここ10年ほどでおおむね35年という建替時期を、全国的にも大量に迎えることが予想されている。「公営住宅の跡地は公営住宅で」という画一的な手法ではなく、この建替時期を最大限のチャンスとしてとらえ、「特別優良賃貸住宅」「定期借地権付きコーポラティブ住宅」「シルバーハウジング」などの多様な選択肢を広げていく必要がある。まさに「公営・改良住宅発の多様な住宅づくり」運動がいまこそ求められている。4
さらに建設省は今年になって「高齢者居住施策の基本的方向」を打ち出す一方「住宅宅地審議会答申」で少子高齢化社会を意識し、バリアフリーの促進など新たな方向を打ち出し、来年度予算に反映させる意向を示している。また、介護保険制度が本格的に導入されるなど、在宅福祉が国をあげて推進されている今日だが、在宅福祉の最大の基盤整備である在宅の「宅」への関心は低く、施策の貧困がいわれて久しい。高齢者にとって最大のバリアとなるエレベーターのない住宅、住宅内でバリアフリーが整備されていないことからくる高齢者の骨折などの事故、ひとり暮らしからくる不安や孤独死といった社会問題など、さまざまな課題が山積している。5
「住民参加」、「多様な住宅づくり」、「福祉のまちづくり」といった校区単位の新しいまちづくり運動は、第3期の部落解放運動の実践でもある。部落解放のまちづくりの目標は「部落の住環境の改善」のみにとどまらず、「部落内外の豊かな関係づくり」にまで発展させるという、人権のまちづくりにほかならない。「ここの住んで良かった」「ここに住みつづけたい」という思いを大切にできる運動の実践、ムラ自慢・支部自慢の実践が、いまこそ求められている。「解放新聞」購読の申し込み先
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