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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

厳しい情勢のなか奮闘して人権の21世紀へ飛躍しよう
(2000.1.17-第1952号)

 新しい年を迎えた。本年も、心を新たにして、部落解放―人間解放の闘い、当面する重要な闘いの課題に全力でとりくんでいこう。
 「部落解放基本法」制定のとりくみでは、その闘いの一環として、人権教育・啓発推進のための法律大綱案を策定し、国民運動を展開してきた。昨年七月に、人権擁護推進審議会が提出した人権教育・啓発の施策のあり方についての答申は、「行財政措置」は明記したものの、わが同盟だけでなく、各政党の申し入れ、多くの自治体や人権NGOなどがパブリック・コメントで要望した「法的措置」、「総合的な推進体制の確立」などを、まったく無視し、国の責務をあいまにした不十分な内容であり、厳しい批判を集中してきた。
 われわれは、こうした法務省の国権主義的な方向に抗して、部落差別をはじめ、さまざまな差別の実態をふまえ、「同和」行政・人権行政の確立を求め、人権教育・啓発を推進させていく「法」の実現に全力をあげていかなければならない。とくに、超党派で構成する「21世紀人権政策勉強会」の活動や与党3党による「人権問題等に関する懇話会」の設置など、昨年の臨時国会での成果を着実に前進させるために、地域での闘いと「基本法」中央行動で展開される各省庁との交渉、国会議員要請などを、かたく結合させたとりくみをすすめよう。
 また、すでに人権擁護推進審議会で論議されている人権侵害にたいする被害者救済の課題でも、昨年12月、わが同盟も意見表明をおこない、パリ原則にもとづく人権委員会の設置や、悪質な差別の規制の必要性などを強く指摘した。こうしたとりくみともあわせ、今後とも、審議会委員への働きかけ、自治体との行政交渉、各政党・国会議員への要請行動などを強め、創意工夫した粘り強い国民運動を展開し、人権教育・啓発推進のための「法」制定を闘いとろう。

 狭山再審闘争では、昨年7月、東京高裁が、抜きうち的に不当きわまりない棄却決定をだした。しかし、真実と正義はわれわれの側にある。マスコミ報道では、「事実調べをしないのはおかしい」という報道がなされ、テレビでもドキュメンタリーとして、再審実現にとりくむ石川一雄さん、早智子さんの活動が紹介されるなど、われわれの粘り強いこれまでの闘いの成果が「石川さんは無実だ」の国民世論として大きくひろがりつつある。
 石川さんと弁護団は、異議申し立てをおこない、すでに補充書、鑑定書作成をすすめている。
 われわれは、第2次再審棄却という事実を冷厳に直視し、本年こそ、再審勝利に向けて闘う体制を再構築しなければならない。昨年は、「住民の会」運動を全国ですすめ、北海道をはじめ七〇あまりの地域で組織が結成され、国語学者の大野晋・学習院大学名誉教授を中心にした意見広告の準備も順調にすすんでいる。さらに、国連規約人権委員会へのとりくみや、カナダでの訴えなど、国際世論の形成でも、大きな成果をあげてきた。
 いま一度、闘争体制の再強化にとりくみ、署名活動や現地調査活動、再審棄却決定への徹底した批判学習を組織するなど、草の根の闘いと、東京高裁・高検に迫る闘いをかたく結合させ、当面する異議審闘争に勝利しよう。
 石川さん自身も、早智子さんとともに、全国各地で、みずからの無実と支援を訴えている。狭山差別裁判糾弾闘争は、これまでも反差別共同闘争の大きな課題としてとりくみがすすめられてきた。
地域・職場・学園など、あらゆるところで狭山事件の真相と、石川さんの無実を訴え、再審実現―無罪獲得に向けて、全力で闘いぬこう。

  昨年来とりくんできた「差別身元調査事件」真相究明の闘いは、全国での依頼企業への調査、実態解明の活動が集約されつつある。こうした都府県連のとりくみをふまえて、今春にも、真相報告中央集会をひらき、部落差別の厳しい実態をあらためて訴えていきたい。とくに、人権擁護推進審議会での規制・救済制度の論議に、このような差別実態を反映させていくことも重要である。
 また、今後とも、政府や自治体、関係機関への働きかけを強めていきたい。昨年は、労働大臣の書簡や、日経連など経済4団体の声明を実現してきた。
今後の課題は、就職差別を禁止したILO111号条約の早期批准と国内法整備、パリ原則にもとづく人権侵害への救済機関の設置などにとりくみ、差別身元調査根絶に向けた社会構造の変革をすすめていきたい。また、自治体での規制条例の制定に向けたとりくみも全国で強化しなければならない。
 今日の部落解放運動は、これまでの差別糾弾闘争の成果として、差別意識を生みだす、その社会構造を変革していくことが重要な課題であることを明らかにしてきた。
 いっぽう、法務省官僚は、昨年七月の「審議会・答申」のなかで、差別事件や人権侵害がおこる原因、責任を一方的に国民の理解不足と断定し、国の責務をあいまいにしている。しかも、法務省主導で、「人権啓発指針」を策定し、86年「地対協」路線の復活を狙い、差別糾弾闘争への弾圧を強めようとしている。
 差別糾弾闘争は、差別や偏見によって歪められた人間を生み出し、支える社会構造を、ともに変革していく、共闘・連帯の場としても、大きな役割をはたしてきた。法務省官僚の妨害を許さず、差別糾弾闘争の原則である、公開性・社会性・説得性を堅持し、差別糾弾の闘いをさらに強化しよう。

 部落解放運動は、「基本法」制定の闘いや狭山再審闘争をはじめ、部落差別撤廃、人権政策確立に向けた闘いをすすめるなかで、幅広い共闘・連帯の輪をひろげてきた。さらに国内ばかりでなく、「世界の水平運動」実現に向けて結成された「反差別国際運動(IMADR)」の活動をとおして、世界の被差別民衆との反差別国際連帯の絆も深まっている。今後とも、国内外の共闘・連帯の輪をいっそうひろげていこう。
 とくに、「基本法」制定の闘いや狭山再審闘争のなかで築きあげてきた共闘・連帯の成果を発展させ、「世界人権宣言」の具体化や「人権教育のための国連10年」推進のとりくみ、「人権のまちづくり」など、さらに幅ひろいさまざまな課題でも、率直な議論をとおして、反差別共同闘争、周辺共闘、国際連帯活動の成果を着実に積みあげていこう。
 さらに今年は衆議院選挙の年である。流動的な政治情勢のもとで、各政党とも、選挙闘争の準備を具体化させている。わが同盟も、部落差別撤廃をはじめとした人権政策の確立、平和と民主主義の実現や環境問題などに真正面から真剣にとりくむ政党・候補者の勝利に、幅ひろい共闘・連帯の力を結集しながら、全力をあげていかなければならない。
 なお、こうした闘いを前進させていくためには、何よりも強固な同盟組織の建設が基本となる。
「基本法」や狭山の闘いを、さらには、地域での要求実現や差別糾弾闘争などのとりくみを、同盟組織の強化、拡大に結びつけていくことも重要な課題である。また、組織拡大とともに、同盟組織の主体的力量を高めていくことも運動の前進には不可欠のとりくみである。同盟員一人ひとりが確かな自覚をもって、闘いをすすめよう。
 まもなく21世紀、新しい世紀を迎える。
 人権を確立し、平和と民主主義の実現に向けた部落解放運動の使命はますます重要である。厳しい情勢を切り拓きながら、本年を「人権の21世紀」実現に向けた飛躍の年にするために、同盟員一人ひとりはもとより、共闘・連帯するすべての人びとと心を一つにして、闘いをすすめよう。
 部落解放―人間解放の「よき日」をめざして、ともに奮闘することを心から訴える

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